杏里「角松敏生関連4W」『Heaven beach』『BIKINI』『TIMELY!!』『COOOL』

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せっかく杏里に頭を突っ込んだのでもうちょっと続けてみることにした。杏里と言えば角松敏生参加のこの4W(『Heaven beach』『BIKINI』『TIMELY!!』『COOOL』)はどうも外せないものらしい。最近発売になった2CDのベストアルバムがこれらのアルバムからのセレクトの少なさから酷評を受けていることからもわかるようにファンには思い入れの多い時期(ただ単にCDが廃盤ってのもあるらしいけど)のようです。この頃はアナログ全盛ですから、CDの流通も少なめですし。
まず『Heaven Beach』。このアルバムの前に「おもいきりアメリカン」「Cotton気分で」などシングルにコンパクトなヒットも出て、そこそこ上り調子な雰囲気のアルバム。ホーンの使い方などユーミンの「PEARL PIRCE」あたりの影響は直下ですね。それにフュージョンちっくなキーボードがちゃらちゃらっと入る。この感じは同じ80’sのオメガトライブが多様した感じ。このアルバムは全曲・瀬尾一三編曲なのですが、ものすごくがんばってリゾート感、トロピカル感出した感じで、リズムはたどたどしいのですが、その分ポップス的な味わいには仕上がっている。小林武史(ex. My Little Lover)が三曲、(うち、二曲は作詞も)参加していて、確か小林武史を初めてクレジットでみたアルバムが大貫妙子の「ニュー・ムーン」だったので、それ以前から業界で活躍してたんだなぁ。飛び抜けた曲は無くても、全体として耳障りよく仕上がっていて完成度は高い。ジャケットのコンセプトがいまいち見えないのだけど、ジャケの悪さが作品のイメージを下げてるような気がする。
続く『BIKINI』。A面にあたる曲を角松敏生、B面を佐藤準が編曲。冒頭からエセ・山下達郎チックな懐かしの角松サウンド全開。いいっす、これいいっす。のっちゃうっす。瀬尾一三には出せないリズムの躍動感。相変わらずユーミンの「PERAL PIACE」は下敷きにしながら、完成度としては前作を上回るリズム。ファーストから息づいていたシティポップ路線が、ここから明らかにR&B的なものに豹変したのが鮮明にわかる。杏里、覚醒!ってかんじのアルバム。
『TIMELY!!』メガヒット「Cat's eye」「悲しみが止まらない」を含む、一般的にはブレイクの起点と思われるアルバム。冒頭「Cat's eye」のアルバム・バージョン、これは見事です。前作「BIKINI」で完成させたR&B的シティポップス感を見事踏襲させることでシングルを聞いてたぶん「あ~あ、杏里、歌謡曲になっちゃったよ」と失望しかけたファンをここできっちり繋ぎ止めております。オリジナルのシングル・バージョンを入れていたら、完全に浮いてしまい、台無しになっていたところです。それでいて嫌味の無い程度に纏めており、このバージョンの出来でこのアルバムの完成度は決まったと言っても過言ではないと思う。思い切って「悲しみが止まらない」もアルバムバージョンにしてみても良かったかもしれませんけど、林哲司の堅実なビートサウンドは崩しがたいものがありますね。シングルは歌謡曲、アルバムはポップス調と、この頃の杏里はそうとうジレンマあったのではないかね?
『COOOL』このアルバム、小学生の頃、川越祭りに行った時に露天の中古レコードのディスプレイにどかーんと飾ってあって、LPだとものすごい迫力で、インパクトあったなぁ。「杏里、今、人気あるんだなぁ」とか実感した瞬間だった。で、そのアルバムを二十うん年越しで聴くことになるとは夢にも思わなかったのだけど。シングル「気ままにリフレクション」をヒューチャーした7thアルバム。Cat's eye以降、シングルはシングルでアレンジを売れ線指向(歌謡曲寄り?)に変えるというのは本人的にもそうとう葛藤あったのだと思う。アルバムバージョンは今までの杏里の路線を頑なに踏襲している。でいて、この後しばらくシングルヒットが出ず、チャートから遠のいたので「杏里、消えちゃったなぁ」とか思っていたけど、一端はこの辺に理由があるようですね。で、四枚続いた角松路線(アレンジ含は三枚)も、ここに来てなんだか落ち着いてしまって、安定はしているけど、「BIKINI」の時のようなフレッシュ感は薄れてしまっている。ということで、好みだけで言えば「BIKINI」が一番いいと思いました。それにしても、デビュー当時から比べたら杏里の歌唱力、半端なく完成してますね。五年余りで。フォーライフのシンガーは今井美樹にしろ、後々に化ける人が多かったようです。杏里、これにて終了。