石黒ケイ「モン・サン・ミッシェルの孤独」

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石黒ケイの声はほんとにいいなぁ。エロくてけだるけて。由紀さおりをもっとしっとり淫靡にした感じ。でも、この人の声が最高にしずる感あったのはビクターの、特に初期のアルバムだけで、ビクター以降、あっちゃらこっちゃらで出したアルバムに関しては、音楽性も含めて声にしずる感が減少気味なのが残念な限り。iTMSで後期アルバムとライブコンピ、そして、うん十年ぶりという2005年のニューアルバムが配信になってますが、特にニューアルバムに関しては、聞かない方が良かった・・・というか、こんなに声低く太くなっちゃったのね。私が一番魅力に感じていた声のしずる感の要がばっさりと消えていました。月日って無惨・・・。
で、このアルバムなのですが、秋元康なんかが作詞で参加しているところからもわかるように、普通に85年あたりにありがちなAOR歌謡です。しかも安めでおしゃれ路線の。ビクター期に築き上げた安酒場のやさぐれたフォーキーなブルース感覚は皆無。この人は結局、音楽性が最終的に纏まりきらなかったのが敗因だったように思う。確かに80年代のど真ん中に初期のフォーキー感覚の持続はそれこそありえませんが、この人と人脈的に近い山崎ハコがある意味自らの音楽性を貫いて、低迷しながらも生き長らえたことを踏まえれば、下手に時代に迎合して刹那的なアルバムを残すよりも支えられるものがあったように感じるのですが。それ以前に山崎ハコほどのアクがこの人の作風には無かったので、単純に比べてしまうのも酷だな。ちなみに、このアルバムと同時発売で全曲自作によるアルバム「情事」も出ております。この時期が彼女の活動のピークだったのだと思います。この前後に糸井重里なんかが参加したアルバムがあったり、充実した時期もありましたが、レコード会社も移動がちで、結局90年ごろには失速してばったりリリースが無くなりました。様々理由はあるのでしょうが、今となってはどうにもならないことですが、ビクターに腰を据えてじっくり活動していたら、もうちょっと違う今があったかもしれませんねぇ。