美空ひばり「旅ひととせ」

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先週、カセットデッキを中古で買ってきたので、飽きないうちにいろいろ聴こうと思って借りてきた。晩年の名曲「愛燦々」を生み出した小椋佳全曲書き下ろしの、美空ひばりの生前ラストのオリジナルアルバム。アレンジは若草恵。全十二曲中、シングル曲を含まず、当時たいしたプロモーションもしていなかったとみえて熱心なファン意外にはあまり知られていないアルバムである。90年発表作品。ドームでの不死鳥コンサートが88年であるから、あのコンサート後にも活発な活動をしていたことが伺えるけど、あの復活のあとあっという間に亡くなってしまった印象が強く、こういう充実したアルバムを吹き込んでいたことに正直驚く。晩年の枯れ味を生かした控えめでしっとりした、情感のあるアルバムである。タイトルにあるように、旅を綴った季節感のある内容だ。枯れ味といっても、スタジオでしっかり腰を据えて歌っていると見えて、不死鳥コンサートの時のような乱調は皆無。さすがである。演歌系の人はとかくオリジナルアルバムが少なく、それは美空ひばりにしても例外ではなかったと思う。その中でも60年代の「歌は我が命」のシリーズ10作とこの「旅ひととせ」は美空ひばりのキャリアの中でも特別な意義があると思う。シングルでは味わえない魅力がこれらのオリジナルアルバムに溢れているわけだから。この「旅ひととせ」は小椋佳自身も同内容でアルバムを出しているので機会があれば聴いてみたいと思う。