加藤登紀子「愛はすべてを赦す」

坂本龍一プロデュースによる、いかにも東大の坂本、加藤っぽいコンセプトによるアルバム。1920年代のパルチザン、革命歌を加藤の日本語対訳で歌ったアルバム。出だしの二曲がピアノ伴奏のみをバックにシックな雰囲気で始まったので、このいい雰囲気で終始終わるのかしら?なんて思ったら、それ以降はしばらく牧歌的なシンセサウンドが続きちょっとげんなり。リリースの82年といったら、YMOの活動小休止期?テクノデリックから浮気なぼくらの間くらいだろうか。坂本のクレジットも(Courtesy of B2 UNIT)となっているし。いくらキーボーディストの坂本といえども、ピアノオンリーでは問屋が卸さない、つーか、宝の持ち腐れ(当時ね)だったのは伺えますが、あまりセンスのいいシンセアレンジとはお世辞にも思えなかった。緩すぎる。その分、ピアノ伴奏の肉体感、立体感が際だって、そちらの出来は申し分ないです。実はこの時期にこんなアルバムを制作していたことをつい最近知った。一時期YMOフリークとして狂おしくはまっていた時期があったにもかかわらず、このアルバムは話題にも上らなかった。みんな知らなかったのか、見落とされていただけなのか。細野さんなんかがアイドル歌謡で当てまくっている最中、坂本はけっこう渋い仕事こなしてたのねなんてけっこう見直したりした。だがやはり、数曲のシンセ曲は駄曲だというか、長い見通しで作りきれなかったという意味では汚点ですね。惜しいところです。