石黒ケイ「STORY」

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ユニオンで315円で購入。特別レアでもないし、あれば安いんだけどね。流通が少ないからなかなかお目にかかれない。でもこうやって手にはいるのだからオークションに手を出さずに探してみるもんだ。ビクター在籍時のアルバムは「女は女」から「アンダートーン」までの四枚だけかとおもっていたら、実はこの異色作「STORY」がビクターでのラストアルバムでした。ライダーズ人脈から糸井重里安西水丸、それに意外も意外の大友克洋の最初で最後の作詞曲「大きな金魚」収録と、なんというか、当時の広告代理店的なもの~サブカル風味を交えた見た目はとても画期的な内容(結果としてこういった人脈が石黒ケイに関わるのはここでだけで後々の広がりは皆無だったけど)。しかし、だ。石黒ケイの最高傑作と言われて、キャリア上最も売れたといわれる「アドリブ」的な方向性をあえて変えてまで冒険する必要性があったのかしらといわれればとても疑問が残る内容ではあります。もちろんそれは結果論。当時としては「更なる石黒ケイの飛躍」としてより馴染みよいポップス路線を歩ませたというのは非常に無難な選択でもある。だけど全ての作詞をいわゆる「職業作詞家」的な人選ではなく業界人的なセレクトで選ぶというとっぽい仕掛けはちょっとハードル高すぎたんじゃないかしらんと思わずにはいられない感じです。それは「ポップスを歌わせるというわかりやすさ」を相殺する「奇をてらった」感を明確にしてしまっているわけだから。なもので、このアルバムいわゆるシングルで切っても差し支えないようなレベルのキャッチーな楽曲が皆無だったりします。どちらかといえば個性的な楽曲が並ぶやっぱり「異色作」としか言いようがない感じのアルバムになってはしまっている。後の石黒ケイの迷走っぷりの先駆けになるアルバムとしては感慨深いものではありますが。80年代ってなにかとスタイルを確立しずらい時代ではあったと思うんですけどね。なんだかみんな一辺倒でしたものね。世の中が。