BRYAN FERRY「TAXI」

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一般評価は驚くほど悪い93年リリースのフェリーのカバーアルバム。実際、中古にもいち早く並び、捨て値のように捌かれていた現実を素直に受け止めてあまり良いアルバムでは無かったのだろう。だけど、個人的にはフェリーのアルバムで聞き込むことが出来た最後のアルバムであり、フェリーの90年代最高作だとおもわれるのがこの「TAXI」だ。先行シングルの「I put spell on you」はビートUKのシングルチャートにもちゃんとランキングしていたからこのアルバムもそこそこ売れたと思うが、これ以降、完全にヒットから見放されてしまった。ロキシー以降のソロ「Boys & girls」「ベイトヌアール」はいわずものがな豪華布陣で大のつく売り上げを記録したメガヒットアルバムだったけど、中ヒットのこの「TAXI」を挟み、再びシーンに返り咲くと思われた「マムーナ」が大コケし、それ以降、フェリーの新曲がチャートを賑わすことがとんと無くなってしまった。でも何となくわかるような気もする。この「TAXI」にあって、それ以降のアルバムにない雰囲気というのがあって、マムーナを含め、それ以降のフェリーのアルバムってなんか古くさいのだ。回顧やレトロを狙っているわけではないのはわかるのだけど、チャートに躍り出るような鮮烈さがない気がする。ポップスのあざとさみたいなもの。そして、一度手放したポップスの錬金術?みたいなものは結局フェリーの音楽に再度宿ることはなく現在に至っているように思う。というか、マムーナに関してはあの「馬ジャケ」の時点であまり聞く気が起きなかったわけだが。
で、この「TAXI」である。メリハリの利いたシャカシャカのリズムがまず心地よいし、全編でウニョ~ンウニョ~ンいっているシンセともギターとも言い難いアンビエントなインストルメンツ(たぶん、これを心地よいと取るか意味不明と取るかでこのアルバムの評価は分かれる)がわらけてくるくらいよい。確かライナーかなんかでフェリーが「最初、48トラックで録音していたんだけど、こんがらがって分けわからなくなったからトラック減らした」みたいなことをいっていたと思うんだけど、そういったこだわりは音にかいま見えて音的にはとても優れたアルバムではある。前途のように全編でウニョ~ンウニョ~ンしているわけだから、聴きようによっては非常に不気味なアルバムで、「Rescue me」や「Because you’re mine」などはかなりやばい。ちょっとしたホラーである。それと反対に「Will you love me tomorrow」「Girl of my best friend」や「Taxi」などはとても穏やかに仕上がっており聞きやすい。でもダメだ。このアルバムのキモはやっぱり「ウニョ~ンウニョ~ン」にあるわけで、聞きやすいなんてダメだ。こんなシャカシャカウニョ~ンウニョ~ンいってるアルバムって他にないですから、皆さんも聴く機会あれば「なるほどな」と思ってみてください。良いアルバムです。