私は私よ関係ないわ

「屋根の上の子守唄」って研ナオコがオリジナルか。
白川奈美が初聞だったのだけど、初期ナオコのやさぐれっぷりは半端無いな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Sさんから電話があった。
Sさんとは入学前に偶然バイト先で会ったりして今の学校関係者では一番付き合いが長い人ではあるが一年で退学してしまった。第一印象が石倉三郎に似ていたので「石倉さん」とここでは呼ぶ。その石倉さんから電話があった。
夏頃に日帰り温泉に行く約束が頓挫(俗に言う「ちんぽ見失敗事件」)し、秋からは私が勉強に追われとりあえず期末が終わるまでは飲む計画も先延ばしにしていた。期末が終わり僅かながら余裕も出てOKメールを出したら「そちらのクラスメイトも誘ってくれ」という。「たくさんで飲むの苦手なので次の機会に」と返信したらすぐ電話が来た。
そもそも小遊三に似ている60過ぎの似さんと三人で飲む計画はあったのだが、似さんから私に特に連絡も無かったので渋っていたのだ。個人的に似さんと飲むのは重い。だが、石倉さんは似さんに言いたいことがあるようだ。石倉さんがそういうなら仕方がない。似さんは用意しましょう。だがそれ以外の人もというのは望みすぎだ。私、石倉さん、似さんという某校アウトロー三人衆の飲み会に誘われて誰が喜び勇んで来るというのか。来るわきゃない。それどころか何を企んでいるのかと変なうわさが立つってもんだ。うわさなんかはどうでもいいが兎に角成りもせぬコマを進めることを厭わぬほど若くもない。結局私のめんどくさがりを受け入れてくれて三人でと言うことに落ち着いた。石倉さんはシンプルな人だ。正直で裏表のない人だ。言葉を字面とおりに理解する人だ。これは一見とてもいい人の様に見えるけど、確かにいい人なのだけれども、いささか不器用にも思える。石倉さんはその性格が災いして誤解を生み、結局学園生活を円滑に行うことが出来なかった。私は別のクラスだったので詳細はわからないが「石倉さん対クラスの女子全員」というとんでもない対立構図を築き上げたと聞く。石倉さん及び該当女子と担任とで何度となく面談も組まれたようだ。だが、和解に至ることはなかった。私も最初その話を聞いた時、該当女子およびクラスの女子の仕打ちがあんまりなもんで同情もしたのだが、話がそんなに単純に終始するわけもない。女子側の言い分を聞いたわけではないし見当もつかないし所詮たわいもないことだと思うが、きっとそちらの意見も真理であるはずだと思う様になった。石倉さんは女の子たちと仲良くしたかっただけだが女の子たちは何かが引っ掛かった。石倉さんはその引っかかりがわからないまま女の子との溝を深めていってしまった様だ。
また、この件には例の「似さん」も深く関わっている。石倉さんはこの件で裏では相反しあう二人に相談を持ちかけている。それは似さんとクラス委員長。似さんは自分より年下のクラス委員長が学級を取り仕切るのが鼻持ちならずいつも不満を抱いている。似さんは話をする時「ここだけの話だが」「誰にも言うなよ」みたいなことを石倉さんによく言っていた様だ。その内容を石倉さんがクラス委員長にうっかりしゃべったことで似さんの怒りが石倉さんに向けられることになる。結局石倉さんは似さんと学級長の板挟みになり私から言わせて貰えばどちらからも見捨てられた。そして、似さんは委員長に要注意人物として認識され結局この二人がクラスのつまはじきものになったようだった。状況の悪さが更なる悪循環を生んだ結果だ。
こう書くと一見、似さんは石倉さんの顛末の犠牲になっただけみたいに見えちゃっておかしいが、当然そんなことはない。似さんも単独であちこちでトラブっている。似さんのトラブルはクラスをまたいで届いたこともあったので私もよく記憶している。球技大会のルールだとかで自分の孫ほどの娘と舌戦を繰り広げたことがあった。やはり、似た人は似た人と集うのだ。私も同じく。それに似さんは石倉さんを裏で操ることで自分をアピールした節があり、自業自得もいいとこだ。

石倉さんはこの期に及んで「あの学校のひみつを知ってる」みたいなことを言う。私は聞く。「そのソースはなんなの?確かなスジなの?自分で確かめたの?実際に目の当たりにした事なの?証拠は残ってるの?」石倉さんはいう「似さんに聞いた話なんだけど・・・」「似さんは学級長に一物あるからいくらでも話をねつ造しかねないよ」「でも本当だよ」「聞いた話すぐ信じちゃダメだよ。石倉さんは手の内見せすぎだと思うよ。つけ込まれますよ」「それはよくいわれる・・・」

どうですか石倉さん。なかなかだと思わない?