中森明菜「unbalance+balance +6」

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90年代明菜のアーカイブシリーズ。
「unbalance+balance」は90年代明菜の最高傑作。これは、アホのように聞いた。アホでした。
いわば私に90年代以降の明菜を免疫づけた、明菜無しの人生はあり得なくさせた中毒作。
「everlasting love」から次作「アルテラシオン」前までのシングルがボーナストラックで入っている。
明菜のアルバムってみんなどれが好きなんだろう。コンセプトで固めた「D404ME」?まりや固めの「CRIMSON」?ワーナーラストの不遇作「CRUISE」?それとももっと前の「POSSIBILITY」とか「ANNIVERSARY」とか?売り上げでは最高の「バリエーション」?エキゾが拗れて吉田美奈子まで至った「不思議」?
いや、どれが好きでもいいんだけど、ただ聞いてみたかっただけ。
このアーカイブシリーズ、一応最新リマスタリングかましてはいるが、このアルバム特有の「くぐもった音質」は変わらずでなるほど、これは狙って作った音質なのねと言うのがよくわかる。この音質は次作のファースト「歌姫」にも引き継がれて、作品に森の奥から響いてくる様な深淵な奥行きを与えていたわけだが、当時は「なんて音の悪いCD」とか思っていた。次作のアルテラシオンでは見違えて高音の抜けた音を作るので「unbalance+balance」とファースト「歌姫」の重厚な音は今聞くと独特でなかなか凝っている。つうか、千住明のストリングスはこの音響じゃないと生きないというのが明確にわかるし、以降歌姫シリーズがことごとく惨敗だった一因も明白。93年に流行歌的ジャンルでこの音質を編み出したってのはなかなか勇気あるし、見事だ。
このシリーズには当時のプロデューサー川原伸司氏の解説も付いていてこれもなかなか興味深い。そもそもこのアルバムで最初にレコーディングを終えたのが小室の二作で、その時点で先発シングルに決定していたのが「愛撫」だったということだ。のちに坂本に「everlasting love」を送られてこちらを移籍第一弾シングルとして切るわけだが。
それを考えると明菜ってのはつくづく運がないというか、損をしているというか。
「愛撫」は結局、アルバムのリードトラックとしてアルバムの売り上げには貢献しただろうが、この曲をシングルで切っていたら90年代最大の明菜ヒットにはなっていただろうことは想像に難くない(「片想い」のカップリングでシングル化されたが時既に遅し)。後に焦って繁忙期の小室に「moonlight shadow」を貰ったところで後の祭りだった。(これはこれでいい曲だと思うけど)。聖子やキョンキョンでさえミリオンを出していた90年代に当てきれなかった明菜の不遇を感じずにいられない。売れりゃいいってもんでもないが、タイミングって大事。

ボーナストラック付きでお得感のあるアーカイブシリーズだが、このアルバムに関してはやっぱり「陽炎」で終わってくれないとダメだ。あと坂本の「everlasting love」は今聞いても寝ぼけた感じの曲だ。坂本って魅力的な歌メロ(うたごころというか)を書ける人じゃないっていうのを自身のプロデュースワークで暴露してしまったよね。小室の「愛撫」はもちろん、玉置浩二の「永遠の扉」とかの方がぜんぜん曲はいいからね。諸事情あったのでしょうが、残念。