根岸とし江「風向き」

セカンドアルバム。デビュー作が78年の春、そして暮れに出たのがこの「風向き」。前作同様作詞家大津彰氏の全面バックアップで制作。というか、大津彰氏とはこれらのアルバム制作をきっかけとして結婚しているそうだ。そういう経緯を考慮すると感慨深いアルバムだ。ファーストのメルヘン、ノスタルジー、やさぐれ感が、セカンドではストレートなロックサウンドに乗り、全体的にシンプルなロック調の曲が多い。一慨にロックといっても人それぞれだと思うけど、ファーストが丹念で繊細なアルバムだとすると、セカンドはストレートでシンプルな感じなのだ。第一印象はファーストの方が数段良い。中古でもそこそこ流通しているファーストはそこそこ売れたのかもしれないけど、余り見かけないセカンドはさすがにあまり売れなかったのかな?それゆえ短期間に集中的に二枚も制作されながらも、以降続くことがなかったのかな?と勝手に想像したりしてみた。あとね、大津氏の曲の旋律がけっこう似通っているのが多くて、若干アルバム二枚にして相当似た曲があったりする。よく言えば「姉妹」的アルバムであるけど、あまりバリエーションなかったのかも。でも以降大津氏は「心の色」「輝きながら…」「AL-MAJI」等々、作詞家として大成していくのだからすごい。だが、四十半ばにしてガンで他界してしまったそうな。大津氏のキャリア上の傑作でありながら廃盤状態のこれらのアルバムがいつか日の目を見るひが来ると良いなと思います。